民話【 七つ森 】

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遠い昔、アサイナサブローという男がいてこの地に、川と沼と山を作った
先祖は、このように言い伝えてきました

のちに、川は吉田川と呼ばれ、沼は干拓されて品井沼となりました
七つの山は吉田川流域の七つの町村( 大和町・大衡村・富谷町・大郷町・鹿島台町・松島町・鳴瀬町 )を見守る七つ森となりました

川と沼と山の創造は、農耕の発生を示唆する偉大な事業のはじまりでした
そして、この土地の人たちはサブローの事業を受けついで、長い年月、水との戦いをつづけてきました
豊かで平和な暮らしを子孫に手渡すための仕事なのでした
元禄潜穴、明治潜穴、高城川の開削、幡谷のサイホン、背割堤などに、水との戦いの跡を見ることができます

宮床ダムも、サブローの事業を受けつぐ人びとの手によってつくられたのであります
湖底には先祖の魂が宿っています
ここを渡りながら、耳を傾けてください
遠い昔のサブローと、サブローの事業を受けついだ人びとが、あなたに呼びかけています

「 先祖から受けついだもの、それを未来に生かしていくのは、あなたなのですよ」
                     小野 和子

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※ そのまま転載いたします


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むかし むかし うんと むかしなあ、
この あたりの ひとたちは むれを つくって
山や 野を かけまわって かりをして
くらしていたんだと
ある ひの こと、山の なかを あるいて
いく ひとりの おとこが いたんだと
ひとつ 山こえ ふたつ 沢わたって
おとこは 谷へ おりていった
おとこのかげが 谷川におちると、
そこら いちめん もうもうと はえた カヤが ゆれて、
その あいだから ひとの こえが わいておきた
「 だれか きたな 」
「 んだっ、わかいおとこ だぞ 」
「 ありゃあ、うすのろの アサイナで ねえか 」



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おとこは カヤの うえに 
どんがりころがると、
うおん うおんと なきだした
アサイナは、でっかい ずうたい
してたけんど、ウサギ 一ぴき
ころせなかったと
そればかりか、
「 かわいそうで、とっても ころせねぇ 」
と、みつけた ケダモノは かたっぱしから
にがして しまうんで、むれのひとたちは
はらをたてた
「 この、うすのろめっ! いっちまえ
おらだちに ついてくるな 」
と、いいすてて、あたらしい えものを
もとめて いって しまったんだと


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アサイナが やってきた 谷は、
みどりの 谷と よばれて いた
かりを する ひとたちの むれが、
あたらしい えもを もとめて
うつって いく ときに、 とりよりや
びょうにんを すてて いく 谷で あった
ときには、むれを はなれた
ひとたちが ひっそりと たどりつく
ことも あった
谷では、アサイナが きたのを よろこんだ
「 アサイナ、水くみ して けれや 」
「 アサイナ、アケビが くいたい ぞい 」
「 アサイナ、こっちさ こいっ 」
みんなは あさから ばんまで
「 アサイナや アサイナや 」
と よんで、たくさんの しごとを
たのんだんだと


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あるとき、ばんつぁんが こう きいた
「 アサイナ、アサイナ おてんとさんと みなみ山と はて さてどっちが とおかんべ 」
すると、アサイナは けろんと こたえた もんだ
「 そりゃ、みなみ山だべさ おてんとさんは ここからみえるけんど、
みなみ山は、さっぱり みえねえもん 」
ところが おてんとさんより とおい みなみ山から、
びょうきの むすめが たどりついた
アサイナは たんまげた
「 あえっ、やっぱし おてんとさんが とおいかや
みなみやまから むすめが きたけんど、
おてんとさんからきた ひとは
まんだ みたことねえぞ 」って、
あたま かかえて、かんがえこんだとさ


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みなみ山から きた
むすめは おもいがけない ことを
かたって きかせた
「 もう どこへ いっても
かりだけ してる ところは ねえんでがす
コメば つくって くらしてるんでがす 」
むすめは しょって きた ふくろから
モミゴメを だして みせた
「 へぇー、こいつば つくってんのか 」
「 ほんだよ もう ケダモノば おって
そっち こっち さまよわなくとも ええんだ 」
谷の ひとたちは たんまげた
くちぐちに つぶやいて、むすめの てのひらの
モミゴメに めを ひからせた
そして ふしぎに つよいちからで、
コメに ひきよせられて いくのだった


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つぎの 春が やってくると、谷では
だれからともなく 土を ほじくり はじめた
「 おらだちも、コメば つくるべ 」
「 そうだとも、おらだちが つくるべ 」
谷は、そう いう ひとたちの あつい
いきで いっぱいに なった
だが、としよりや びょうにんの おおい この谷で、たよりに
なるのは、うすのろの アサイナ たったひとり
「 たのむぞど、アサイナ 」
じんつぁんや、ばんつぁんに かたを
たたかれて アサイナは しゃなすに はたらき はじめた
くる ひも くる ひも、ことばを
わすれて くるったように はたらいたとや


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このころからだった
アサイナの からだが 火のように
あつく なって いったと いうのだ
「 アサイナよう 火の玉でも のんだかや 」 
みんなが、アサイナの からだに
さわってみると、その てが つんと
つっぱる ほどに あつかったと
アサイナが りょうてを おっつけて
大木を おすと、なんと そこから
火のこが まって、みるまに 大木は
もえつきる。
いちめんの カヤを
なぎたおすと、ごおっと おそろしい
おとを たてて、カヤは やけただれた


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こうして、たちまちの うちに
谷は みごとな 田んぼに かわり、
稲ほが きんいろの なみで うねる 日が きた
みんなは 田んぼの へりまで にじりよって、
なめるように 稲を ながめたとや
  あさげの 稲コは しんら しんら
  ひるまの 稲コは きんら きんら
  ばんげの 稲コは ぎんら ぎんら
    はあ 美ぐすい 美ぐすい
その夜は みんなの うたう こえで、
夜あけまで 谷は にぎわった


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そうして、ある 秋の ことだった
くろい くもが 谷を おおったと おもったら、
だわだわ 雨が ふってきた
雨は 三か 三ばん
ふりつづいて、四かめには 谷の 水が あふれだした
あれっと いう まに、どっ どっ どっと
てっぽう水が つっぱしり、くびを たれた
稲が ねこそぎ ながれだした
アサイナは 川に とびこんで あつい からだを
たてに して、水を ふせごうとした
けれども、水は あとから あとから
よせて きて アサイナに のしかかった
おそろしい ことは つづいて
つぎの としにも 谷は てっぽう水に おそわれた


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雨が あがると、アサイナは
山へ のぼって いった
そらに 月が のぼり、
いまは しずまった 川を
てらして いる
川は ひかる おびに なって、
山と 山の あいだに きえていく
そして、はるかに みえる
平地の うえに ふたたび
すがたを あらわすと、こんどは
からまる つたのように
うねって いく
アサイナは、ながい こと
川の ながれを みて いたが、
なにを おもったのか、わらわら
山を おりはじめた
山を おりて 川しもへ 川しもへと 走った


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つぎの あさに なると、谷の
ひとたちは、天から ふってきた
土の 雨に おったまげた
  ざざ、ざざ、
   ざざざざどーっ
天から 土が ふってくる
「 あえーっ、アサイナが山より
でかくなって、土ば はこんでっど 」
「 おーい、アサイナ なに してんだあ 」
アサイナは はるか 上の ほうから、
「 おらぁ、川しもに
沼ば こしらえっぺと してんだあ 」
と、大きな こえで へんじした



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ひと山 土を あけると ひと山だけ、
ふた山 土を あけると ふた山だけ、
アサイナの からだは ぐえらぐえらと
でかく、なるでは ないか
その たびに ほおが ひびわれ、
せなかに ふとい みぞが はしり
うでから あかい しぶきが あがる
アサイナは また 川しもへ むかう



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もえる からだで 岩を とかし、
大地を かっぱじき、土を ほって
たんがらに もりあげる
それを しょって、また 土を なげに いく
えぐられた 川しもの 平地は
川の 水を とぷとぷと のみこんで、
たちまち 池と なり 沼と なって いく
いまは もう アサイナは
くもの うえまで つんぬけた
かみは ほのおとなって 天を つき、
目は ぎんぎんと もえて 火を 
「 おらだちも、いくどーっ 」
あるける ものも、あるけないものも、
むちゅうで アサイナの あとを おった


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運んだ 土は 七つの 山と なって ならんだ

  にょっきり
  もっきり
  もっこ
  もっこ
  もっくら
  もっくら
  でえん

さいごの 土を はこびおわると、
アサイナは たんがらを ぽんと ほうりだした
  ど ど ど ど ど
    どっ どっ どおーん
つよい かぜを まきおこして
アサイナは たおれた
たおれて いくつも いくつもの
ちいさな 山に なって
とびちったんだと


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こうして できた
七つの 山に、やがて
みどりの 木が しげり、
「 七つ森 」と
よばれるように なった
七つ森の ふもとで くらす
ひとたちは、とおい むかしの
アサイナの なを いまも
かたって いる
 「  七つ森ば つくったのは
      アサイナサブローだど
  そんどき ほった沼が
  いまの 品井沼に 
      なったんだ
  土を はこんで
      あるいた あとが、
  吉田川だ
  なげた たんがらが、
      ころころ ころがってって、
  ほれ あの めんちゃっこい
  たんがら森に なってんだど 」





『 七つ森 』
ところどころ、後世に伝えたいメッセージをも感じます
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何かキャッチ出来ればと思います






本日も最後までお読みくださり、大変光栄に感じます!
Cám ơn nhiều!



**** 杜の都・仙台在住 ****
整導石師( せいどうせきし )・柴田 日南

by ninastone | 2018-10-14 20:20 | 地域との繋がり